物の豊かさと心の貧しさ

今、日本の国に多くの外国人が来ています。その中で勉強に来ている留学生も沢山在籍(平成28年24万人)していることです。
その中の一人、オーストラリアから来た高校生が、サヨウナラ・パーティで、こんな素晴らしい挨拶をしました。
「わがオーストラリアと比較して、はるかに狭い国土に膨大な人口をかかえ、天然資源もほとんどない・・・そういう日本にハイテクな機器が家庭の中まで入り込んでいるのを今回の生活体験の中ではじめて知ることが出来ました。私たちが日本の段階に達するには、あと何年もかかると思います。これからも私たちもしっかり学んで、日本のように発達した国を作っていきたい」こんなスピーチでした。
私たちの自尊心をくすぐるような、そして日本の現状をよく観察したスピーチであると思いました。
帰りの電車の中でこの素晴らしかったスピーチを思い浮かべながら私の脳裏に浮かんだのは、女優の稲垣美穂子さんが書いた「愛の目覚まし時計」の中で紹介されているこんな話でした。
ドイツの友人が「日本は素晴らしい国だ。あの敗戦の中から現在のこんなにいい日本を作り出したのは本当に驚異としか言いようがない。しかし、今の子供たちが日本を背負っていくようになったら、この国は大丈夫だろうか。漫画やゲーム、携帯電話、おもちゃだけ与えられ甘やかされている子供たち・・・君はこの現状をなんとも思わないかい。」
稲垣さんは反射的に「うん、思う」と答えてしまった。そしてこのような子供のために出来ることは何かと考えたとき、「自分に出来ることはミュージカルしかない」こう決心して、劇団『愛の目覚時計』を結成したのです。
この劇団のいくつかある出しものに、アンデルセンの「にんぎょ姫」があります。この物語は本当の愛情はお返しを求めない、いわば無償の愛、愛する者のためには命さえも捨てることの貴さを子供たちに訴えるねらいをもっています。
ところが、このミュージカルのクライマックス、王子をナイフで刺し殺そうか、それとも愛する王子様の幸福のため、自らの身を海に投げだそうかと迷うシーンがあります。この場面で以前は「殺しちゃいけない!」と叫んでいた子供たちが、「早く、殺してーッ」という悲痛な声が暗い客席から聞こえるようになった。初めてこの声を聞いた時、稲垣さんは手にしたナイフを落としそうになったと語っています。
さて、オーストラリアの生徒のスピーチに、私たちは自己満足に酔っていてよいのだろうかと反省させられました。私たちは眼に見えないところで、大切なことを忘れてはいないだろうか。「殺せ!」という叫び声は何も子供たちばかりではない。現在の多くの日本人が、自分のこと、自分の利益しか眼中になく、他人に奉仕する真の意味で人を愛することが出来なくなってきているとはいえないでしょうか。
私たちは、愛という言葉を日常の生活の中でよく使います。しかし、心の底ではいつの間にか、自分のために人を愛するというエセの愛、自己中心的になっているのではないか。貧しい心とはこの「自己中心的な心」をいうのです。
世の中はどんどん進歩して変わっていきます。それに対して人の心はどんどん冷めて情がなくなっていくことを淋しく思うのです。 合掌

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