
さて、臨済禅を再興した高僧の白隠禅師(1768年没)に次のような話があります。
白隠禅師は十六才のとき、はじめて法華経(観音経は法華経の一部)を読んで
「この経に功徳があるなら謡曲や講談本にも功徳があるはずだ」と軽侮と疑念を持ちます。
白隠が四十二才の秋です。彼の傍らで一人の坊さんが法華経を誦んでいました。
そのとき石だたみの上で一匹のコオロギの鳴く声が聞こえてきたのです。
禅師の心中深くに閃くものが……その時、ほんとうに法華経が読めたのです。はじめてわかったのです。
どのようにわかったかは、その後白隠禅師の言動に展開されますが、
その時点での心境は他から窺い知れない絶対的なものでありました。
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